
節税にはオペレーティングリースの活用がおすすめ!出資の仕組みと効果を解説
会社の節税対策として、オペレーティングリースの仕組みを活用した投資方法が人気を集めています。
オペレーティングリースに出資を行うことで、多額の損金を計上して課税所得を減らし節税に役立てられるからです。
とは言え、オペレーティングリースがどのような仕組みなのか、また会計処理がどうなるのかなど、細かい部分がよく分からないという方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、オペレーティングリースが節税に効果的とされる理由と、その仕組みについて解説しています。
オペレーティングリースの仕組みが持つメリット・デメリットなども紹介しているので、会社の節税対策をお考えの方はぜひ参考にしてみてください。
オペレーティングリースの活用による節税の仕組み
オペレーティングリースとは、特定の物件を長期間貸し出すことでリース料を得るリース取引の仕組みのことです。
また、このオペレーティングリースの仕組みに匿名組合の契約を組み合わせた投資商品を「日本型オペレーティングリース(JOL)」といいます。
まずは、オペレーティングリース取引の概要と、日本型オペレーティングリースの仕組み、節税に繋がる理由について詳しく見ていきましょう。
オペレーティングリース取引の特徴
オペレーティングリースとは、機械や自動車などの物件を長期間貸し出すリース取引の仕組みの1つです。
リース会社が物件を貸し出し、借手側はリース期間に応じたリース料を支払うという仕組みになっています。
リース会社はリース料を受け取って収益が得られる他、物件を所有することで減価償却が発生し、利益の繰り延べによる節税効果が期待できるなどのメリットがあります。
また借手側は必要な備品を月々払いで安価に利用できる点がこの仕組みのメリットです。
通常、オペレーティングリースはリース会社(貸手)と法人(借手)の2者間で行われる取引方法です。
一方の日本型オペレーティングリースでは、リース会社と別に「匿名組合」と呼ばれる貸手が登場します。
リース会社が匿名組合を立ち上げると、投資家が組合員として物件の購入に出資できるようになります。
出資した投資家は、リース料や売却益などの収益の一部を分配金として受け取ることが可能です。
この仕組みを活用することで、投資家も権利収入の獲得や減価償却による損金算入などの節税のメリットを享受できます。
特に損金算入できる点は節税面での効果が大きいため、お金を儲けることよりも節税のために損金算入を目的として日本型オペレーティングリースへ出資する法人がほとんどです。
取引の仕組み・流れ
日本型オペレーティングリースは投資家からの出資や金融機関の融資を受けて物件を購入する仕組みです。
そのため、通常のオペレーティングリースよりも扱う物件が高額になるのも特徴。
日本型オペレーティングリースの取り扱い物件は、主に航空機・船舶・コンテナの3種類です。
ここでは航空機のリースを例にして、実際の取引の仕組みと流れを解説していきます。
まず、航空機のオペレーティングリースは以下のような構成で成り立っています。
構成 | 役割 |
---|---|
リース会社 | 航空機ごとに匿名組合を立ち上げる |
匿名組合 | 航空機を購入して航空会社へリースを行う |
投資家 | 匿名組合員として航空機の購入に出資を行う |
金融機関 | 出資金が足りない場合に匿名組合へ融資を行う |
航空機メーカー | 航空機の販売 |
航空会社 | 匿名組合から航空機のリースを受ける |
市場 | 中古の航空機を販売 |
続いて、航空機リースの一連の流れは以下の通りです。
- リース会社が匿名組合を立ち上げ、投資家(匿名)から航空機購入の資金を集める
- 投資家からの資金が不足している場合は金融機関から差額を借り入れる
- 出資金・借入金を使って航空機メーカーから航空機を購入する
- 購入した航空機で航空会社とリース契約を結び、リース会社がリース料を得る
- リース期間満了時に航空会社または市場が航空機を買い上げ、利益が投資家に分配される
リース期間中の物件はリース会社と匿名組合の所有となるため、中長期的に減価償却が発生します。
また日本型オペレーティングリースでは、リース期間満了時にそのまま物件を買い上げるケースが多く、売却益として更なる利益が得られる可能性もあります。
会計上・税務上の仕組み
日本型オペレーティングリースの場合、出資金は金融商品取引法における「有価証券」に分類されます。
減価償却費や受け取ったリース料などは匿名組合の費用・収益になるという仕組みです。
しかし、匿名組合はあくまでも出資を募る窓口としての仕組みであり、匿名組合自体が法人格を持っているわけではありません。
そのため匿名組合の費用・収益として計上された金額は、匿名組合では課税されず、投資家へ分配されたあとで課税される仕組みとなります。
この仕組みにより、匿名組合の減価償却費を法人の損失として計上でき、課税所得を減らすことで節税につながるのです。
ただし、税務上の損金にできるのは出資した額と同額までと定められています。
以前は出資額を上回る損金算入が可能な商品(レバレッジドリース)もありましたが、2005年度の税制改正以降は制限されています。
現在、出資額を上回る損金算入があった場合は税務調整されることになると覚えておきましょう。
オペレーティングリースの仕組みで節税の効果が得られるケース
会社の事業計画に合わせてオペレーティングリースの出資を行うことで、利益の繰り延べだけでない様々な節税対策が可能となります。
続いて、日本型オペレーティングリースの仕組みを活用した節税がより効果的となるケースについて詳しく見ていきましょう。
損金計上による突発的な利益の繰り延べ
日本型オペレーティングリースの減価償却方法は定率法となっているため、物件を購入した年から2・3年目までは減価償却費が大きくなります。
減価償却費は物件の所有者である匿名組合、つまり投資家へ出資額に応じて分配されます。
そのため、多額の減価償却費と会社の利益を相殺でき、課税所得を減らすことで節税につながるという仕組みです。
損金算入の節税メリットが最も大きいのは出資初年度です。
何らかの理由で突発的な利益が発生した年に出資を行うことで、より高い節税効果を期待できるでしょう。
減価償却の割合は商品によって異なり、初年度に出資額の7~8割を損金算入できる商品が人気です。
中長期的な資産運用
突発的な利益ではないものの、余剰資金として3,000万円以上の資産を保有している場合は、日本型オペレーティングリースでの資産運用もおすすめ。
航空機リースなどは需要が高いことから取引が比較的安定しており、売却益によって出資額以上の収益を得られる可能性も十分にあります。
お金を稼ぐことを目的とした仕組みではないため利益率は特別高くありませんが、少ないリスクで安定した投資と節税対策ができる人気の商品と言えるでしょう。
事業承継にともなう自社株の譲渡
日本型オペレーティングリースは、事業承継にともなう自社株譲渡の節税対策にも有効です。
自社株を譲渡する際は贈与税・相続税などが発生するため、保有量によっては一括での移行が難しいケースもあります。
そこで役に立つのが日本型オペレーティングリースの仕組みです。
減価償却によって多額の損金算入があると、会社の資産が減少して評価が下がります。
会社の評価と合わせて株価も下がるため、このタイミングで自社株の譲渡を行うと贈与税・相続税を節税することが可能に。
また日本型オペレーティングリースの損益は営業外損益の扱いになり、会社の営業利益に影響を出さず節税できる点も人気の理由の1つです。
退職金への割り当て
日本型オペレーティングリースでは、リース期間満了時に物件の売却が行われます。
借手がそのまま買い上げるケースが基本ですが、買い上げがなかった場合は市場にて売買される流れとなります。
いずれにしても、リース期間満了のタイミングで出資額とほぼ同額の収益が発生するということです。
節税対策とはいえ、日本型オペレーティングリースの投資はあくまでも利益を繰り延べる手段であり、最終的に自分の元へ資産が返ってくることを想定して計画する必要があります。
収益が発生するタイミングと合わせて行うと良いのが、現社長の退職です。
ここで事業承継を完了させることで、分配金として計上された収益と退職金を相殺でき、更なる節税対策が可能となるのです。
投資を行う場合のメリットとデメリット
日本型オペレーティングリースには、節税対策という面以外にもいくつかのメリットがあります。
ここからは、リース取引に出資を行うメリットと、デメリット・注意点について詳しく見ていきましょう。
1回の出資で取引が完了する
日本型オペレーティングリースを利用した節税のメリットとして、支払いが1回で済むという点が挙げられます。
節税対策で保険契約を結ぶ法人も多いですが、保険の場合は翌年以降も継続して掛け金を支払う必要があります。
翌年以降も同様の利益が発生するとは限らず、常に先々の支払いを意識して運用しなければなりません。
一方日本型オペレーティングリースであれば、初年度に一括で出資を行って完了となります。
翌年以降の利益に左右されることがないため、節税の中でも突発的な利益の繰り延べ策としておすすめです。
航空機リースなどは比較的利益を得やすい
日本型オペレーティングリースはノンフルペイアウト方式となっており、あらかじめリース期間満了時の残存価格を査定したうえでリース料が計算される仕組みです。
この残存価格はあくまでも予想値であり、実際の売却時の金額が予想を上回るケースも少なくありません。
売却時の価格が残存価格を上回った場合は、売買差益(キャピタルゲイン)としてプラスアルファの利益が得られます。
物件の中でも航空機は需要が高く、今後も比較的安定して利益が出ると予想されています。
参考として、各リース資産の最低出資額やリース期間をご紹介。
航空機 | 船舶 | コンテナ | |
最低出資額 | 3,000万円 | 3,000万円 | 1,000万円 |
リース期間 | 8年~12年 | 6年~10年 | 5年~7年 |
需要判定の指標 | 世界人口 | バルチック海運指数 | GDP成長率・交易係数 |
価値の変動 | 需要が高いため比較的安定している | 変動が激しい | 技術革新が起こらないため下落しにくい |
船舶は価格変動が激しく、大きな利益が出る可能性がある一方で損失を被るリスクもある商品です。
またコンテナは少ない出資額で投資でき、リース期間が短いため他の商品と組み合わせで利用されることが多い商品となっています。
単純な節税以外の利益を得るという観点で比較した場合、最も安定しているのは航空機リースと言えるでしょう。
中途解約できないなどのリスクも
日本型オペレーティングリースにはいくつかのデメリットもあります。
まず、日本型オペレーティングリースは原則として中途解約を行うことができません。
借手側が早期購入選択権を行使した場合をのぞき、リース期間満了時以外での資金移動は行えないという点に注意しましょう。
また航空機リースなどは比較的安定しており、利益を得られる可能性が高いことをお伝えしました。
しかしこれは確実ではなく、需要が大きく変動した場合など状況によっては元本割れを起こすリスクもあるのです。
節税対策として有効でも投資ということを理解しておく必要があります。
日本型オペレーティングリースは元本保証がないため、万が一の損失を考慮して商品を選ぶ必要があるでしょう。
個人の場合は節税効果がない点に注意
日本型オペレーティングリースは法人の節税対策として有効な仕組みであり、個人投資家にはそのメリットがありません。
個人投資家の場合、匿名組合から計上される費用・収益は雑所得として扱われ、損益通算することができないのです。
日本型オペレーティングリースの仕組みで節税効果が得られるのは、法人投資家だけであることを覚えておきましょう。
まとめ
- 日本型オペレーティングリースとは、物件の購入に出資することでリース料の受け取りや減価償却費の計上ができる仕組みのこと
- 突発的な利益の繰り延べ策や自社株対策などの節税対策として多くの法人に利用されている
- 節税に有効でも途中解約不可・元本保証無しなどのデメリットもあるため、出資先は慎重に選ぶことが大切
日本型オペレーティングリースは、単なる利益の繰り延べだけでなく、事業承継や資産運用など様々なシーンでメリットのある節税方法です。
下記リンク先でより具体的なオペレーティングリースを活用した節税方法について解説していますので、よろしければご覧くださいませ。
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